5月16日(木)「放射線を用いた画像医学の実際」
「放射線を用いた画像医学の実際」
目次
【1】様々な検査方法
【2】核医学について
【3】その他の検査方法
【4】放射線を使う医師の責任
【5】今後求められる技術
【1】検査方法
①X線検査
「FPD」
FPD とはフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector) の略で、体を透過したX 線を、このFPDで受け取り、デジタル信号に変換することによってレントゲン写真を得る装置。従来の装置(CTシステム)と比べて、より高精細な写真を得ることができるようになった。また、FPDは従来の装置と比べX線の感度が高いため、より少ないX線量での検査が可能。
FPDの性能と最新の画像処理技術により、高画質でノイズの少ない鮮明な画像を得ることができる。
「CR」
X線デジタル撮影装置
②造影検査
・陽性造影剤(原子番号が大きい)
体の構成成分よりX線透過性が高い。
・陰性造影剤(低密度の物質)
生体の構成成分よりX線透過性が高い。
「二重造影」
陽性造影剤と陰性造影剤の併用による二重のコントラストを利用するX線検査法で,消化管の検査に用いられる。陰性造影剤(空気) で内腔を拡張し,陽性造影剤が十分行き渡るように何回も体位の変換を行なって撮影する。
④CT
臓器や組織ごとに放射線の吸収度合いが決まっている
→観察しやすい条件を設定
造影剤を使用した画像診断において、造影剤を血管に注入してから30~40秒後[動脈相]、70~80秒後[門脈相]、150~240秒後[遅延相]という三つの区分で撮影し、それぞれの区間にどの血管が映し出されるかを観察する。肝細胞癌の診断にとっては動脈相が特に重要だが、遅延相も診断能力を上げるために貢献している。
脳梗塞のCT検査について
病変の低吸収域が上昇し、正常脳に近づいてしまう。
発症から1日後に撮影された画像を見ると、病変の領域は明瞭。
しかし、2週間後の画像では、病変が不明瞭になる。
脳梗塞のCT所見
CT検査では発症直後、異常を指摘する事は出来ない。
CT画像上で脳組織に所見が認められるのは、およそ6時間以上経過した後。
また、2~3週間程度経過すると、脳梗塞部分の低吸収域は不明瞭となる。
肺腺癌とCT
CTでは小さなGGDとして抽出
胸部X線では抽出不可
「拡散強調画像」
ブラウン運動による水分子の動きを特殊なパルスで強調
CTで描出できない、超急性期または急性期の脳梗塞診断に非常に有用で、救急医療で広く用いられている。
造影CTは出血性病変、血管性病変に有用
単純CT検査:造影剤を使用しないで検査する方法
造影CT検査:造影剤を静脈から注射して検査する方法
「CT尿路検査(CTウログラフィー)」
腎盂・尿管・膀胱といった尿路の病変をCTで評価する方法のこと。
「PET-CT」
PET-CT検査のPETとは、“Positron Emission Tomography”の略でポジトロン断層装置ともいい、18F(フッ素18)などの陽電子(Positron)放出核種を用いて行う検査。
18FにFDG(フルオロデオキシグルコース・ブドウ糖類似化合物)を標識した(くっつけた)ものを静脈に注射し、身体の糖代謝の状態を撮影し画像化する。
同時にCTを撮影し重ね合わせることにより、位置関係も把握しやすくなる。
「MDCT(multi - detector row CT)」
多列検出器型エックス線CT装置
広範囲の正確な3次元データ
⑤MRI
所定の磁場内におかれた、単位体積あたりに含まれるプロトン(水素原子核)の密度と、その状態を繰り返し時間、エコー時間等の値を調整して画像化する。
脂肪はプロトンを多く含む。また、プロトンを多く含む水分は体液、軟組織に広く分布している。MRIはプロトンからの信号を画像化するため、組織の含水量や組織内の脂肪の量は、MRI信号の基本となる。
MRI撮影では、通常T1強調画像・T2強調画像の2種類をセットで撮影する。
この2種の画像では、身体の中で強調される組織が異なるため、それぞれの画像から各組織を特定することができる。
T1強調画像
主に脂肪組織が白く見え、水や液性成分・嚢胞は黒く見える。
また、腫瘍はやや黒く見える。
このT1強調画像では、身体の解剖学的な構造が見やすい特徴がある。
T2強調画像
脂肪組織だけでなく、水や液性成分も白く見える。
また、腫瘍はやや白く見える。
このように、T2強調画像では、T1強調画像に比べて病変も白く見えるため、病変の存在をしることができる。
MRIの利点
・組織分解能が高い
・任意の方向に描出可能。
・血流に関する情報取得可能。
・被曝がなく無侵襲である
MRIが弱い点
石灰化を無信号としてしまう。
石灰化とは
血液中のカルシウムが細胞間に沈着する現象。
「MRA」
MRI装置を使用した血管撮像(MR Angiography) 。
MRIの技術を用いて血管像を描出する。
X線による血管造影検査と違い、 MRAはX線の被ばくなく、造影剤も使わずに検査することが可能。
「MRCP」
MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査。放射線や造影剤を使用しないため、身体に大きな負担なく検査を受けられる。
腹部超音波検査でも胆嚢、胆管、膵管を観察しますが、腹部内にガスや脂肪が多いと画像が見えにくかったり、小さな病変を描出するのが難しいことがある。また超音波検査では異常があっても描出することができない部分もあるため、MRCPを追加することでより詳しい情報を得ることができる。
US、CT、MRIの比較
|
US(超音波) |
CT |
|
濃度分解 |
|
|
◯質的情報 |
空間分解 |
|
◯解剖情報 |
|
価格 |
◯ |
|
|
【3】核医学について
「放射性同位元素を用いる検査」という意味で使われている。 実際には、まず微量の放射性同位元素で目印をつけた薬品を体内に投与。 この薬品は検査の目的や臓器に応じて選択される。 その薬品は、その種類によって体内で代謝され組織に集積される。
【4】その他の検査方法
①IVR
さまざまな医療場面で活躍の場を広げている治療法で、正確には「Interventional Radiology=インターベンショナルラジオロジー」、日本語では「画像下治療」と訳す。文字通り、X線(レントゲン)やCT、超音波などの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、細い医療器具(カテーテルや針)を入れて、標的となる病気の治療を行う。低侵襲。
②骨シンチグラフィー検査
骨はその形を維持しながら、常に新しい骨組織に置き換わっている(破壊と再生を繰り返しています)。骨に病気が発生すると、この破壊と再生のバランスが崩れ、骨を作りすぎたり(骨造成、骨硬化)、作らなかったり(骨吸収、溶骨)といった現象が起こる。骨シンチグラフィー検査はこの骨造成を反映する検査であり、がんが骨へ転移しているかどうかを検出するのに頻繁に利用される。がんが骨に転移しているかどうかは、がんの治療を進めていくうえで重要な情報となる。
③Seldinger法
Seldingerにより考案された血管を露出することなくカテーテルを血管内に挿入し、造影検査、治療を行う方法をいう。
④肝動脈化学塞栓術(TACE)
肝癌は、進行すると肝動脈の血流が豊富になり、腫瘍への栄養を供給するようになる。足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、肝臓内の腫瘍を栄養する細い動脈までカテーテルを進める。そこで抗癌剤などを入れ、動脈の血流を遮断し、腫瘍細胞を壊死させる方法。
【4】放射線を使う医師の責任
医療被曝のみ線量限度の規定がない。
線量は医師の診断に委ねられ医師は診断に適した線量を判断する責任がある。
【5】今後求められる技術
撮影スピードの向上
診断をAIに任せる